ココペリさんの活動とコミュニティ「Locopelli」
2021年3月17日、第9回となる、COMOLYオンラインセミナーを開催しました。
講師は、ひきこもり経験者で、発達障害の当事者でもある、ココペリさん(濱田知希さん)です。ココペリさんの人生経験から、「脳科学からひきこもりを考える」をテーマにお話し頂きました。
現在、ココペリさんは「独立支援」のコミュニティと「発達障害」のコミュニティを、オンラインで展開されています。特に、発達障害のコミュニティ「Locopelli」に力を入れ、 健康麻雀やスポーツ企画、散歩、カラオケオフ会など、活動の様子がハートネットTVの番組「所さん大変ですよ」で紹介された事もあります。
2020年はコロナ禍で体調を崩し、Locopelli の活動も滞ってしまい、一時、ひきこもり状態にまでなりました。
ココペリさんの生い立ち
ココペリさんの先祖は、東京音楽大学の創始者「鈴木米次郎」です。父親の濱田芳通さんは、スタジオ・ジブリの映画「耳をすませば」のキャラクターとして、楽器の演奏を担当したこともあります。 彼は、そんな音楽家系・家族の長男として生まれました。
ココペリさんは長男として、周囲の人々に承認されて育ちましたが、気が弱く、いじめられやすい特性で、自分の意見が言えない子どもでした。ゲームの時間は厳しく制限され、家系・家庭の事情でバイオリンの練習を強いられました。
やがて、大学受験に失敗し、浪人状態となります。高校までの定期試験は、一夜漬けでも乗り切れましたが、大学受験となると出題範囲が広く、やはり大変だったそうです。2浪したものの、ADHDの特性の影響もありオンラインのアニメとゲームに没頭していたため、志望校には合格できませんでした。
その時、今まで考えた事もなかった「将来の夢」で、悩むようになりました。悩み抜いた結果、やりたいことは、とにかく大学へ入学した後に考えようと、覚悟を決めます。
大学入学後は、英語を教える夢を持ち、思考は「やるべき」から「やりたい」へと切り替わりました。
そして、ココペリさんは「好きなことをして生きる」と決意します。
これがターニングポイントとなり、ココペリさんは、根拠のない自信と、高い自己肯定感を獲得しました。
大学では、好きだった女性に片想いでフラれながらも、難しい研究と並行して、就職活動もこなしました。時には、半年間ひきこもり状態になったり、孤立した時期もありましたが、無事に卒業することができました。
会社にはシステムエンジニア(SE)として就職しましたが、今度は雑用ばかりの日々で、仕事の意味が見出せなくなり、新型鬱にかかってしまいます。
そんな中、当時、流行り始めた SNS が切っ掛けでビジネスセミナーに参加し、起業という選択肢を知ります。
その時から「やりたいことを仕事にしたい」という思いが強まり、同時に、他の多くの人も「やりたいことを仕事にして欲しい」と考えるようになりました。
こうして、1人1人のやりたいことを応援する「ココペリ」というサービスを企画しましたが、周囲の人々に否定され、苦しい時期を過ごすことに。しかしある時、自分を肯定してくれる女性と出会えたことで、ココペリさんの新型鬱は寛解していきました。
発達障害と脳の使い方について
発達障害は、ASD、ADHD、HSP、HSSなど、様々な種類があります。中でもASDとADHDは対照的な特性で、 それぞれを比較すると、以下の図の槍(矢印)のようになります。
脳の状態は、「楽観脳」と「悲観脳」の2つに分類され、童話の「アリとキリギリス」に例えられます。 ASDとADHD、HSPとHSSを、それぞれ対比して「楽観脳」と「悲観脳」で分けると、以下の図のようになります。 左の青字が「悲観脳」、右の赤字が「楽観脳」です。
フロイトの構造論によると、動物的な本能である「エス(Es)」と、親などに教えられた「超自我(スーパーエゴ)」があり、どちらかに偏った状態は、生きづらいと言われています。
また脳は、三大神経伝達物質である、快楽物質の「ドーパミン」、イライラ物質である「ノルアドレナリン」、そして、ドーパミンとノルアドレナリンをコントロールする「セロトニン」の影響を受けています。
ココペリさんは、そうした脳の特性を踏まえ、領域を理想主義的な「本能」と、現実主義の「理性」で分けています。 湧き出る様々な感情や感覚、趣味・嗜好などを、本能と理性で分類し、どちらに自分の特性が寄っているかを分析することで、社会との整合性を保っているそうです。
「日本の社会では"個人の輪"よりも"集団の輪"の方が優先されるので、個人の自由を優先したい人にとっては、生きづらい」とココペリさんは言います。 彼は、"個人の輪"も"集団の輪"も両立した、誰にとっても生きやすい社会の実現を望んでいます。
ココペリさんが考える理想の実現
「アウトカム」とは「なりたい未来の自分」のことです。アウトカムの先、目標達成後の状態を、「メタアウトカム」と言います。 「メタアウトカムを最初から目指すと、自然とアウトカムなっている」という発想に、ココペリさんは衝撃を受けました。
また、「お金のいらない社会」という長嶋龍人さんの書籍の内容にも、深く共感しています。海外では、ジャックフレスコさんが、同じような思想で活動されているそうです。
最後に、マルクスの資本論について触れ、「共産主義とは本来、無政府状態のはずだが、現在の共産主義は、政府の介入が多すぎる」と批判し、 政治家、マスメディアへの露出、新しい社会システムの構築や、Facebookを超えるSNSの開発など、将来の展望を壮大に語って下さいました。
執筆者の感想
ココペリさんの講演を聴き、やはり「ひきこもり」を一括りに出来ない事を痛感しました。 ひきこもり当事者の方は、じっくり考えて行動する人が多い印象ですが、ココペリさんは行動力が高く、後半に紹介したように、自分の事業を他者から否定されても繰り返し多くの人に紹介するなど、メンタルが強いように感じました。 また、ココペリさんは自己肯定感が高く「根拠のない自信がある」といったご本人の発言も、ひきこもりに対する一般的なイメージには、当てはまりません。
不登校やひきこもりを論ずる際に、必ず言及されることが「履歴書の空白問題」です。履歴書に空白ができると、会社に勤める際に不利になります。 しかし、ココペリさんが提案された、やるべきことをやるのではなく、やりたいことをやる。つまり、自分で起業したり、フリーランスで収益化する上で、実力やチャンスさえあれば、履歴書の空白は、あまり問題になりません。
つまり、会社員ではなく、自分がビジネスを展開すれば、履歴書の空白問題は消え、また、好きなことが仕事になれば、仕事そのものが楽しく、自信にもなります。
現在の支援の多くは、会社員(就労)がゴールになっており、履歴書の空白が多い人は、不利になります。そのような意味でも、ココペリさんの「独立支援」には、ひきこもりの社会課題を解決する力があるかもしれません。 そして、各々の特性を知り、どのように生きていくのかという意味でも、脳科学からひきこもりを解析する価値があると思いました。
今回の記事は以上となります。お読み頂きありがとうございました。読者の皆様は、どのように思われましたか?
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