第10回 COMOLY オンラインセミナー
公開:2021年5月31日
発行:COMOLY
身近な人とのコミュニケーションを考えてみよう
八重田洋(やえだひろし)
一般社団法人 日本キャリア形成推進協会 代表理事
2021年4月21日、第10回となるCOMOLYオンラインセミナーを開催しました。
一般社団法人日本キャリア形成推進協会の代表理事、八重田洋さんをお招きし、「身近な人とのコミュニケーション」について、講演いただきました。
コミュニケーションギャップとは?
人には、それぞれ独自の「窓」のようなフィルターがあります。
コミュニケーションは、そのフィルターを通して交わされます。
みんな、自分のフィルターを通して、情報を取捨選択しているのです。
つまり、「何を伝えたか?」よりも、「何が伝わったか?」が、肝心だということです。
例えば、「目標を実現するためには、問題も見なければならない」という、上司の言葉に対して、部下のAさんは、「目標を実現するんだな」と解釈し、部下のBくんは、「問題を見るんだな、と解釈しました。
このように、人は見たいものしか見えない、聞きたいことしか聞こえていないということがあります。
それは、人の脳が取捨選択しているのです。
この絵、カラスに見える人、いらっしゃいますよね?
ですが、「この絵、ウサギの絵に見えませんか?」と聞いたとたん、ウサギに見えてくるでしょう。
この絵も同様に、赤ちゃんのシルエット(赤い線)が見えると、赤ちゃんがいるようにしか見えなくなってしまうのです。
そのように、脳が取捨選択しているのです。
コミュニケーションギャップはナゼ起こるのか?
さて、なぜ「コミュニケーションギャップ」は起きるのでしょうか?
それは、自分自身で、「どうせ〜〜〜だ」などと、「自分や他人に、レッテルを張ってしまっているから」です。
例えば、私が経験した、あるエピソードをご紹介しましょう。
最近テレビで、2020年に亡くなった女子プロレスラー木村花さんの、自殺に関する報道が流れた際、
一緒に見ていた私の義理の母が、「なんで、そんなことで自殺しちゃったのかな?」と、言いました。
私が、その言葉に驚いて、「そんなことって、どんなこと?」と尋ねた所、義理の母は、「だって、プロレスラーって強いんでしょ? なのに、なぜ自殺しちゃったの?」そう、答えました。
「プロレスラーは強い」
この固定概念が、義理の母にあって、「ニュースの本質が伝わってないのだな」と、感じました。
このようなコミュニケーションギャップは、他者に対してだけでなく、気付かない内に、自分自身の中でも起きています。
コロナ禍で出現した、いわゆるマスク警察の人が、「マスクをしなければならない!マスクをしてない人はダメだ!」といって、無関係な他者に強要すれば、トラブルが起こりますよね。
実は、「思い込み」で善悪を「決めつけ」てしまう所に、危険性が潜んでいます。
そのような善悪の判断ではなくて、「ああ、この人は、自分の意見と違うだけなんだな」と言う風に捉え直すことができると、先程のような「思い込み」や「決めつけ」によるリスクが、グッと和らぐのです。
テレビ番組の街頭インタビューで、回答者が、曖昧な言葉を使っていたり、上司との待ち合わせの約束の中に、暗黙の前提があったりと、 こうした「思い込み」や「決めつけ」が、「コミュニケーションギャップ」を生み出しているのです。
自分の中の「思い込み」
では具体的に、どのような思い込みがあるのかを知るために、世間でよくある10個の思い込みを例に、自分がいくつ該当するか、数えてみて下さい。
- 子供が学校へ行くのは当然だ
- 場の空気に水をささないほうがよい
- 女性に年齢を聞くべきではない
- デートでは男の方が奢るべきだ
- 相手の年齢、地位などによって対応を変えるのは当然だ
- 社員、あるいは生徒の不祥事に、上司または校長先生が、直接関係なくても謝罪するのは当然だ
- みんなが残業している時に、1人だけ定時に帰るのはおかしい
- 外出前に、髪や化粧(とくに女性)など、身だしなみを整えるのは当然だ
- 年賀状などには返事をすべきだ
- 大人になったら結婚して子供を持つべきだ
さて、6個以上該当した人は、比較的、世間体がよく、常識的な方ですね。
極端な話しですが、以上に上げた例も、世間から文句を言われる事なく安全でいようとする人の「思い込み」なのです。
【参考】https://diamond.jp/articles/-/73925(ダイアモンドオンライン)「コミュニケーション」って何だろう?
みなさんは、「コミュニケーション」って、なんだと思いますか?
セミナー当日、ご参加の皆様から、「コミュニケーションって、何だろう?」というテーマで、ご意見をお寄せ頂きました。
その中には、「単なるリアクション」、「お互いを知ること」、「人との触れ合い」、「伝える手段」、「価値観の共有」、「心と心をつなぐもの」などなど、様々なご意見がありました。
私がいつも行うセミナーの中で、「コミュニケーション」とは、「意思の疎通」であるとご説明しています。つまり、「一方通行」ではなく、「双方向からのキャッチボール」が、「コミュニケーション」なのです。
「キャッチボール」とは、相手の意見を受け止めて、投げ返す事を例えています。この、「キャッチボールする能力」を向上させる事によって、人との、より良い信頼関係を築く事が出来ます。
「キャッチボール」のやりかた
(コミュニケーション能力2級認定講座テキストより)(日本コミュニケーション能力認定協会)
コミュニケーションのキャッチボールには、方法がたくさんありますが、その中から今回は、 「リフレクティブ・リスニング」という手法をご紹介します。
相手が、どんな気持ちや考えの上で話をしているか、その気持ちをくみとりながら、傾聴して、共感を言葉で表す、という手法です。
それでは、シミュレーションしてみましょう。
あなたの子供が学校から帰ってきて、ランドセルを置くなり、
「今日、鉄棒で逆上がりの練習をしたんだけど、自分だけできなくて、頭にきちゃったんだよ!」
(コミュニケーション能力2級認定講座テキストより)(日本コミュニケーション能力認定協会)
と言っています。
このような時、あなたなら、どのような声をかけるでしょうか?
ここでは、「出来なかったんだね、次は出来るようになるといいね。」と言ってあげるのが、模範的な解答になります。
子どもが頭にきている事に対して、「悔しかったんだね」と共感してあげるのが、まず基本です。そのあとで、子どもが出来なかった事に対して、アドバイスをしてあげる、というのが、具体的な一連の流れになります。
「自己重要感」とは?
(コミュニケーション能力2級認定講座テキストより)(日本コミュニケーション能力認定協会)
人は、自分自身のことを「価値ある存在」だと思っていたいし、他者からも、自分のことを「価値ある存在」と認めてほしいと、願っています。それが、誰もが生まれながらに持っている「自己重要感」です。
みんな、自己重要感を満たす「心のコップ」を持っていて、他者からの承認と自己承認で並々と満たされている時に、幸福を感じる状態になるのです。
「自己重要感」を満たす行動
(コミュニケーション能力2級認定講座テキストより)(日本コミュニケーション能力認定協会)
「自己重要感」を満たす行動は、普段から誰もがしていることです。しかし、当たり前のことだからこそ、意外と、見過ごしてしまうんですね。
- 自己承認のための努力
- 認められようとするための努力(存在意義の確認)
- ファッション、ブランド品、最新の高級車の所持
- 必要以上に大きな家、大金持ちの家
上記は、「自分は〇〇出来るからすごい!」など、「自己承認」するための行動です。
下記が、「〇〇さんはすごいですね!」など「他者から承認」されるための行動です。
- やたらと多い自分の自慢話
- 横柄な態度
- 他人の同情を引くための病気
- 他人をけなす、批判好き
- 噂話をするのが好き
人が「自己重要感」を満たすのは、1人ではとても難しいことです。
だからこそ、「キャッチボール」のやりかた、その技術さえ分かれば、あなたも必ず、他者や自分の「自己重要感」を満たすことが出来るのです。
今回のセミナーが、みなさんの、より良い人間関係の一助となることを、願っています。
※八重田さんが出版された書籍もございます。もっと詳しく知りたい方は、以下のリンクから詳細をご覧いただけます。
良質なコミュニケーションとは -2020/6/10 八重田洋 (著) LABプロファイル®
感想
今回のセミナーで、私は、同じ話をしても、人によって伝わり方が違うのだと驚きました。
自分自身にも心当たりがあり、「なぜか自分だけが腹を立ててしまう」と言う困り事があったため、それが解決しそうです。
自分の中に何かの決め付けがあり、それらが会話にまでこんなに作用する事が理解できました。
コミュニケーションを取る事によって、そんな発見があるのだから、これからも怖がらずにさまざまな発見や失敗を繰り返し、より良い人間関係を構築しようと強く感じました。
また、コミュニケーションを取る事によって、自己肯定感が満たされると言う大きな気付きがありました。
今まで怖がってしていなかった事も、これからは、積極的に取り入れて、様々な人と会話をしたいと思います。
この度は大変有意義なセミナーをありがとうございました。このような機会をいただけた事に感謝します。
今回の記事は以上となります。お読み頂きありがとうございました。
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